中国語の「上火」ってどういう意味?

先週くらいにTwitter上でも多数の人に言及されて話題になっていた中国語の上火shàng//huǒ)という単語の意味。発端はこちらの中国嫁日記さんの記事からでした。

事の次第はリンク先の漫画がわかりやすくまっているのでそちらを是非ご覧いただければと思います。キーとなるセリフは「(日本語には)上火という概念自体がないんだよ」です。それでは次からこの上火について見ていきましょう。

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「上火」を辞書で調べてみる

恐らく中国で長い間滞在している人であれば、誰しも先の漫画のような場面には出くわしたことがあることでしょう。中国人が「我上火了(私は「上火」という状態になりました)」という。意味がわからないので辞書で調べてみる。辞書には次のように書いてある。そしてなんとなく意味がわかったようなわからないようなという状態に陥る、という流れです。

上火 shàng//huǒ

1. <中医>のぼせる
 便秘または鼻腔・口腔などの炎症をさす
2. <方>怒る、かっとなる

『中日辞典第2版』小学館・商務印書館より引用

まず辞書の1つ目に「中医的にのぼせる」という意味が書かれています。これいったいどういう意味なんでしょう?

普通に日本語で「のぼせる」と言ったら、どんな時に使いますか?たとえば熱いお風呂に長い時間入ってたら「のぼせた」と言うことがあるでしょう。こんな時の「のぼせる」は「頭がぼーっとする」とか「立ち上がったらクラッとする」といった意味で使っています。それが「中医的にのぼせる」ということは「便秘または鼻腔・口腔などの炎症をさす」そうです。日本でお風呂に入って便秘になったり鼻や口の中に炎症ができる人はいるでしょうか?恐らくいないと思います。この時点でなんだかわかったようなわからないような微妙な気がしませんか?(笑)

辞書の2つ目の意味は「怒る」とか「かっとなる」といった方言です。方言ですから、中国のどこかの地域では普通話で話している最中に上火と言ったら「怒る」とか「かっとなる」という意味になるんですね。恐らく限定的な地域ではこういった意味になるんだろうなということがわかったようなわからないような気がします(笑)。

対外漢語の先生に「上火」の意味を聞いてみた

辞書で調べた結果、なんとなく意味がわかったようなわからないような気になりましたが、まだモヤモヤしています。そこで対外漢語の先生に上火の意味を聞いてみました。対外漢語とは外国人に中国語を教える専門のことで、中国の大学の中国語中国文学系統の学科にはだいたい設置されている専攻のことです。その先生の回答がこちらです。

上火 shàng//huǒ:身体里面有热气,例如得口腔溃疡(体の中に熱気がある、口内炎ができたりする)

●どんなときに「上火」になるのか?
生气的时候(怒ったとき)
吃辣的时候(辛いものを食べたとき)
没睡好的时候(よく寝られなかったとき)
肠胃不好的时候(胃腸の調子がよくないとき)

●「上火」になったらどうするのか?
去火(その火を消し去る)
多喝水(水あるいはお湯をたくさん飲む)
多吃水果(果物をたくさん食べる)

●たとえばどんな果物を食べるといいのか?
可以吃“冷的”水果,比如西瓜、梨(冷属性の果物がよい、スイカとか梨とか)
不可以吃“热的”水果,比如橘子、荔枝(熱属性の果物はだめ、ミカンとかライチとか)
苹果是中性的,也可以吃(リンゴは中性的だけど食べてもOK)

どんな意味かわかってきましたか?恐らく日本語の「お風呂に入ってのぼせる」とはだいぶ意味が違うような気がしてくるのではないでしょうか。

先に挙げた日本語には上火という概念がないという説明がよく理解できてくると思います。

ちなみに中国医学では食べ物は冷属性のもの、熱属性のもの、中性のものに分けられるそうです。日本人(私も含め)はこの属性については全く知らないと思いますが、中国人は一般の人でもわりとこの食べ物の属性を気にする人が多いです。冷属性は中国語で凉性liángxìng)あるいは寒性hánxìng)といい、熱属性は温性wēnxìng)あるいは热性rèxìng)といいます。

「上火」を1つの日本語で表すには

さてここまで見てきたら上火を1つの日本語で表すのは難しいことがわかると思います。「怒ったとき」「辛いものを食べたとき」「よく寝られなかったとき」「胃腸の調子がよくないとき」に共通の表現って何かあるでしょうか。

胃腸の調子がよくないときに日本語で「胃がむかむかする」という表現を使うときがあります。そして怒ったときに「むかついた」という表現を使うときがあります。ひょっとしたら「むかつく」という訳がいいのかなと思いましたが、辛いものを食べて「これは辛い!とてもむかつく!」と言ってたらなんかおかしいですよね(笑)。

「火照る(ほてる)」はどうでしょうか?まさに「体が熱気を帯びて熱く感じる」という意味なのでもしかしたら上火の訳として合うのかなと少し思いました。しかし、「火照る」だとあまりマイナスの意味がない、つまり中国人のよく使う体調不良としての意味に欠けるのでこれも完璧にはマッチしませんね。

「かっかする」あるいは「かっかとする」と訳すのはどうでしょうか。「かっか」の辞書的な意味は「体が熱くなる」と「興奮して冷静さを失う」ですので、「体の中に熱気がある」とか「怒る」といった意味を表すのに適しています。辛いものを食べたときも使えそうですしね。

やっぱり上火を1つの日本語で表すのは難しそうです。

まとめ

いろいろと考えてみたのですが、上火を1つの日本語で表すとしたら、深いことはあまり考えずに「かっかして体調が悪い」でいいんじゃないでしょうか。中国人が上火というとき、たいていは体調がよろしくないんですね。上火というのは「体が熱くなる感じがしてどこか体調が悪いんだな」ということで理解しておけばよいでしょう。もともとの単語上火は状態を表しているだけで具体的な症状の意味までは入ってないので、どんな日本語で表すにせよ、簡単に体調が悪いということがわかるような訳し方でいいと思います。

以上、中国語の上火についての考察でした!

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