【読書メモ】中国地名カタカナ表記の研究―教科書・地図帳・そして国語審議会

読んだ本のメモを記しておきたいと思い、このブログに新たなカテゴリ「読書メモ」を設けました。第一弾は中国地名のカタカナ表記についての書籍です。

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カタカナになった中国地名はちょっとヘン―!?教科書、教師用指導書、受験参考書、地図帳に蔓延するトンデモ地名たち。中国地名の不思議なカタカナ表記は、はたして一体いつ、誰が、何のために始めたものなのだろうか!?その探求は、戦前まで時間をさかのぼり、海を越え韓国・タイへと広がってゆく…!!!

次のように分けて見ていきたいと思います。

それではまず全体の構成からです。

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全体の構成

この書籍は次の四章と一つの補論から成り立っています。

  • 第一章 教科書・地図帳・指導書の中国地名表記
  • 第二章 国語審議会と文部省の文献
  • 第三章 戦前の文献を巡って
  • 第四章 現代のカタカナ表記を巡る問題
  • 補論 韓国語とタイ語の中国地名表記を巡って

第一章で戦後から現代までの教科書・地図帳・指導書に見える中国地名のカタカナ表記について概観し、第二章でその元となった公的文書について解説されています。第三章は戦前の文書に現れるカタカナ表記について、第四章は問題点のまとめと今後の展望が書かれています。最後に補論として韓国語とタイ語に現れる中国地名表記について、二名の専門家による論考が掲載されています。

書籍から学んだこと

現状、教科書・地図帳・指導書に載っている中国の地名は表記方法が統一されておらず、いろいろと混乱しています。漢字表記だったりカタカナ表記だったり、はたまた漢字とカタカナの入り混じった表記だったり。たとえば長江一つとってみてもチャンチヤン/チャンチアン/チャン川/チャン江/ヤンツー川/ヤンツー江など。長江なら一目で見てわかりそうなものですが、カタカナ表記は全く統一されていないようです。いちばん笑わせてもらったのはなんといってもター運河でしょう。これ大运河(Dà Yùnhé)のことらしいです(笑)。

そのような表記の混乱がなぜ起こったのか。それは中国地名をカタカナで表記させることを推進する人々がいるにも関わらず、統一した表記を提案した形跡がないからです。戦前のカナモジ派やローマ字派、戦後のカタカナ推進派ともに中国地名をカタカナで(あるいはローマ字で)読ませようと勇ましい論理を展開しているにもかかわらず、誰もその統一規則を系統立てて整理していないのですね。

「中国地名はカタカナ表記で現地読みするべきだ」とする議論が戦前からあったことも新たな気づきになりました。別に昨今のグローバル化を受けてこのような議論が新たに出てきたわけではなく、昔っからあることなんだと。

著者は中国語の発音をカタカナ表記することについて全否定しているわけではなく、補助的にカタカナでこう読むんだと表記することには結構なことであるとしています。ただ漢字を廃してカタカナ表記のみにしてしまうことについて、警鐘を鳴らしているのですね。

堅苦しい書き方ではなくユーモアも交えてわかりやすく書かれているので一気に読み終えることができます。忙しい方は第四章だけでも読んでおくとよいでしょう。第四章にはこの書籍のエッセンスがつまっています。

私見

私個人の意見としては、中国の地名は日本の漢字で覚えればいいと思っています。無理に中国語読みにしたとしても、カタカナ表記で声調まで現わすことはできないし、日本人が普通にカタカナ読みしたとしても絶対に現地音にはなりません。ましてや英語話者も日本人の日本語カタカタ読みを聞かされてもが理解できないでしょう。たとえば広州を「コワンチョウ」と読んで中国語話者がそれを「guǎngzhōu」と聞き取ってくれるでしょうか?いや絶対に通じないと思います。

私も著者のご意見には賛成であくまで補助としてカタカナ表記を使うのは良いと思います。カタカナが「安徽(あんき、アンホイ)」のように書いてある分にはある程度の役には立つでしょう。漢字を知っているということは音節の区切り方を確認することができるので中国の地名を読む際にメリットになります。そのメリットを捨て去ってどこで切って読むかわからないようなカタカナ表記のみにしてしまったら混乱間違いなしですね。

関連リンク

次の東方書店のウェブサイトに書籍の解説と関連リンクが掲載されています。また、雑誌『東方』に載った関連テーマの論考についても見ることができます。

また、著者が中心となって作成した「中国地名カタカナ表記・ローマ字表記一覧」は次のリンクから確認できます。

以上、『中国地名カタカナ表記の研究―教科書・地図帳・そして国語審議会』についての読書メモでした!

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