声調が変化しつつある単語

中国語ネイティブと話していたり中国語のテレビを見ていたりすると、「あれ?この発音って辞書と違うんじゃない?」と思うことがたまにあります。中国語に接する機会が多いと、多数の中国人が辞書とは違う発音をしている単語があることに気づくんですね。そのような単語について、代表的な4つを挙げてみましょう。

声調が変化しつつある単語
尽量(できる限り)|辞書の発音:紧量jǐnliàng|実際の発音(95%):进量jìnliàng
尽快(できるだけ早く)|辞書の発音:紧快jǐnkuài|実際の発音(95%):进快jìnkuài
质量(品質)|辞書の発音:质量zhìliàng|実際の発音(40%):止量zhǐliàng
复杂(複雑な)|辞書の発音:付杂fùzá|実際の発音(30%):甫杂fǔzá

カッコ内のパーセンテージは私の勝手なイメージで、ネイティブの中でこのぐらいの比率の人が辞書とは違う発音をしているだろうという割合です(もし実際に調査したデータなどを知っている方がおられましたらご教示ください)。

尽量尽快については、95%(つまり私の接したことのあるほぼ全員)が辞書に記載されている三声ではなく、四声で発音しています。

质量は私の周りでは辞書どおりの発音をする人の方が多いのですが、テレビに出てくるインタビューなどを見ていると、ある一定数の人がを四声ではなく三声で発音しています。

复杂は私のイメージでは3割ほどの人がを本来の四声ではなく三声で発音しています。ただし、別の意見として中国語通訳経験者の方に伺ったところ「9割は三声で発音してるよ」との意見も頂いています。

広範囲にデータをとって統計処理をかけたわけではないので、人によって割合のイメージは違うと思いますが、おおむね「辞書と違う発音が定着しつつある」という意見では一致していると思います。それでは、以上4つの単語について、1つ1つ詳細を確認していきましょう。

スポンサーリンク

尽量の「尽」

尽量は「できる限り~」という意味で使う副詞です。はもともと多音字で、三声と四声の発音があります。辞書で確認すると次のように区別されています。

尽量 jǐnliàng

[副詞](最大限度に達するように力を尽くすことを表す)できるだけ、極力、なるべく
[発音]俗に jìnliàng とも。


尽量 jìnliàng

心行くまで飲む(食べる)、堪能する → 主として酒や食事の量について用いる
[比較] jìnliàngjǐnliàng:前者は動詞で述語になることができる。後者は副詞で動詞・形容詞を修飾する。しかし実際には俗読みで両者を区別せずに jìnliàng と発音することが多い。

『中日辞典第2版』小学館・商務印書館より引用

尽量はもともと声調によって意味が区別されていたようで、四声の発音では酒や食事の量を満足するまで飲み食いするという意味があったんですね。今では両者区別されずに jìnliàng に収束してきているようです。これが辞書にも記載されているということは、95%以上というイメージもあながち間違ってはいないと思います。私も自分で「できるだけ」という意味で発音する際は四声を使っています。

尽快の「尽」

尽快は「できるだけ早く~」という意味で使う副詞です。同様に辞書で発音を確認してみましょう。

尽快 jǐnkuài

[副詞]なるべく早く、できるだけ早く
[発音] jìnkuài とも。

『中日辞典第2版』小学館・商務印書館より引用

尽快尽量と同様、が四声になってしまうことは周知の事実として記載されています。

この尽快、ビジネスでもよく使うので覚えておくとよいでしょう。私が中国語学習1年ののち、中国で働き始めた際にこんな電話のやりとりを経験したことがあります。

取引先:那你什么时候要?(それならいつ必要ですか?)
私:尽快 jǐnkuài 吧。(できる限り早くですね。)
取引先:尽快 jìnkuài,是吧?(できる限り早く、だね?)
私:是,尽快 jìnkuài。(はい、できる限り早く。)
取引先:好的,我知道了。(いいですよ、わかりました。)

私としては辞書で調べて必死こいて発音したつもりでしたが、思いっきり言い直しさせられてしょげかえった記憶があります(笑)。その後、周りの人たちの発音を聞いていると、どうもほぼ全員を四声で発音していることに気づき、私も以後ずっと四声で発音するようにしています。

质量の「

次は质量を見てみましょう。质量は品質という意味で使われる名詞です。は多音字でもなんでもないのですが、ある一定の層には本来の四声ではなく三声で発音されているようです。辞書の記載を確認してみましょう。

质量 zhìliàng

1. <物>質量
2. (製品や仕事などの)品質、質、優劣の程度、質的な内容

『中日辞典第2版』小学館・商務印書館より引用

は多音字ではないせいか、声調変化について特に記載されてはいないようです。実際私の周りでも、を三声で発音する人はいません。ただ、テレビのインタビューやドラマなどを見ていると质量を三声で発音する人が何度も出てくるので、何かしらの変化が起こっていると思います。

この現象は中国語ネイティブ同士でも「おかしいよね」という認識があるようです。おもしろい議論が交わされている掲示板のリンクを紹介しましょう。

上記サイトでは、まず「ほとんど全ての人がを三声で読む」と言っています。それに対し「北京語と普通話の違いだろう、北京人は四声を三声で読むんだ」という意見があったり、「いや、南方の方言が入ってきたせいだろう」という意見があったり、はたまた「北京とか南方とかは関係なく、『全ての中国人が間違いやすい』って言った方がいいんじゃない?」という意見があったり、見解は一致していない様子です。

私の周りではあまり三声で発音する人はいないので、個人的にはずっと四声で発音しています。

复杂の「

最後に复杂です。复杂は「複雑な」という意味の形容詞です。まずは辞書の記載を確認してみましょう。

复杂 fùzá

複雑である

『中日辞典第2版』小学館・商務印書館より引用

复杂も多音字ではないので、辞書には特に記載がありません。ただ、多くのネイティブがを本来の四声ではなく三声で発音しているようです。私の体感としてはそんなに多くの人が三声で発音しているイメージはないのですが、テレビを見ていると最も標準的な発音を求められるアナウンサーまでもが三声で発音しているのを聞くこともあります。私は四声で発音していますし、言い直しさせられたこともないので、今後も四声で発音しようと思います。

まとめ

言語は変化するものなので、規範と実際の発話にズレがあることは当然のことです。日本語でもら抜き言葉は文法的に間違っているとはいえ、日常会話の中では普通に使われていますよね。ここで挙げた4つの中国語単語も、多くの人々が辞書に記載された標準の発音とは違った発音をしています。特に尽量尽快については、もう辞書の標準を修正してしまってもいいんじゃないかと思うほどです。

正しい規範的な言葉を追求するのも良いですが、現実に広く運用されている言葉の現状を理解するのもまた重要です。

なお、多音字に関しては次の解説記事をご参考ください!

以上、声調が変化しつつある単語の紹介でした!

ホーム / 常用中国語トップ / 中国語豆知識へ戻る

このページをシェアする

スポンサーリンク